「君たちはどう生きるか」鑑賞予定の方へのアドバイス

君たちはどう生きるか」、観てきました。

 

この駄文含め、だいぶ情報も露出してきたタイミングではありますが、折角ここまでガードされている作品なので「ネタバレなしで映画を観る」という貴重な経験は味わった方が良いと思います。



そこまで言っておいてなんですが、一つだけアドバイスがあります。

吉野源三郎氏作の小説「君たちはどう生きるか」を、ちゃんと読んでおきましょう。

昔一度読んだことがある、ぐらいな人は観る前に復習した方が良いと思います。



僕はマンガ版が流行っていた時にコンビニで立ち読みしたぐらいで、ちゃんと読んだと言えるか疑問符が付く状態で、記憶に曖昧な部分がありました。

まあ、恥ずかしながら立ち読みしながら泣いていた記憶は鮮明なのでインパクトは残っているんですけどね(^_^;)

 

どこかで読んだ「題名を借りてきただけで厳密に言えば原作ではない、ストーリーともほぼ関係ない」という怪情報を真に受けたのは失敗でしたねorz



さて、そうは言っても火のない所に煙は立たないの言葉通り、「怪情報」が出回るにはそれなりの理由があるようです。

少なくとも、本作において同名の小説は「原作」という立ち位置ではありません。



敢えて言えば「耳をすませば」の中の「カントリーロード」のような立ち位置、、、いや、そう言ってしまうと却って誤解を招くかもしれませんね。

 

カントリーロードの存在を知らなくても「耳をすませば」は理解できます。

むしろ歌詞の意味や歌の背景まで理解している人にしてみたら作中のあまりの「独自解釈」にモヤモヤして物語に素直に入れ込めない可能性だってあるかもしれません。

 

耳をすませば」の中の「カントリーロード」は劇中で示されている情報以上でも以下でもないのです。歌の持つ力は存分に利用されてはいますが、「耳をすませば」を理解するために劇中で示される以上の歌に関する情報は無用の長物です。




『映画「君たちはどう生きるか」』の中では『小説「君たちはどう生きるか」』の筋書き的なものへの言及は全くありません。

 

それでいて、物語の転換点の全てがこの小説に託されている、と言うのが僕の解釈です。



僕が知らないだけなのかもしれませんが、ここまで既存の創作物の存在に依拠した創作物は今まで観たことがありません。強いて言えば、「聖書」とかならあるでしょうね、というレベルですね。



宮﨑駿監督と言えば、自作の漫画を原作とする「風の谷のナウシカ」を含めてベースとなる著作物を影も形も無く作り替えることで悪名高い人でしたが、これまでとは正反対な姿勢ですよね。

 

小説の内容に言及がなかったのは、小説に対する最大級の敬意だと思いますし、映画の筋立てそのものが小説への過剰なまでの信頼で成立していると言えます。

 

評価が真っ二つに割れた大きな理由の一つはこの特殊な構造にあるんでしょうね。




作品への個人的な評価についてはどう書いても蛇足にしかならないような気がするのですが、そうと判っていて一言だけ言わせてもらうと

「どんな人にとっても全く触れる価値のない作品ではないのかな」

ですかね。