いまさらですけど、「逃げ恥」を見ました。
まず原作から出会えた幸運について
Koboのセールスでたたき売りになっていた原作を購入したまま積ん読しておいたのを先日ぽっかり時間が空いた際に読んだことから火がつきまして。
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ここのところ私が読んだ本の中でも特に印象に残っている本が3冊あるのですが、
きずなと思いやりが日本をダメにする 最新進化学が解き明かす「心と社会」
- 作者: 長谷川眞理子,山岸俊男
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2016/12/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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きずなと思いやりが日本をダメにする 最新進化学が解き明かす「心と社会」【電子書籍】[ 長谷川眞理子 ]
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非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か【電子書籍】[ 杉田俊介 ]
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LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略【電子書籍】[ リンダ・グラットン ]
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この三冊が提起している問題にそれぞれそれなりの回答を示していると言いきってしまっても言いすぎではないと思います。現代日本の闇に差した一筋の光に思えました。おおげさですけど本音です。
良作ドラマに原作者の悲哀を見る
漫画を先に読んでダバダバ涙を流したのでこのままドラマを見ると「見なきゃ良かった」と思うパターンかなとも思いましたが、あれだけブームになったのだから見るべき点はあるのだろうと怖々見てみた結果思ったことは
- どちらも見るつもりならまず漫画から
- これだけ原作を絞り尽くしたドラマは初めて見た
- 恋ダンスとか割と「刺身のツマ」だった
の3点。
実のところ、ドラマを見た後に漫画を読み直すとかなり冗長なストーリーだなと思ってしまいます。が、漫画を読まずにドラマだけ見ては物語が示すテーマの全てを吸収することは難しいと思います。
これは漫画の作者である海野つなみ氏が連載期間だけで4年半の歳月を費やし、恐らく連載開始以前から渾身の力を振り絞って構想し、取材して得た物を詰め込んで構成したものを印象に残る部分をチョイスして11話の連続ドラマに再構成した結果と考えれば当然です。
結局商業的二次創作って言うのは原作者が監督でもしない限りは下手に料理されても上手にされても原作者としてはある程度の悲哀を味わうことになるのかなーと思わざるをえない残酷な現実もみえました。
が、端書きなんかを読むと原作のラスト近辺はドラマの脚本と原作が相互にフィードバックしあったことがどちらの展開にも活かされていたみたいですね。漫画が終盤にさしかかった時期のドラマ化というのも、たまたまそのタイミングになったのかもしれませんが、大事に育ててきた作品のいわゆる「龍の目」の部分で外部からの口出しを受け入れて完成度を高めると言う作業があったのは海野つなみ氏の度量の広さをしめすエピソードのような気がします。*1
「逃げ恥」が示したものとは(ココからネタバレ)
ところでドラマを見終わってさらに欲張って余韻に浸りたいとググってたら
こんな声もあったようで。
この物語がここまで受け入れられたのもやはり新垣結衣さんの人気や恋ダンスと言った「大向こう受け」を担った要素が働いていたからという点は間違い無くあり、原作が構築し、ドラマが啓発した「未来を先取りした思想」自体が受け入れられている訳じゃない、いや、むしろ読み解かれてすらいない可能性がある、ということを物語っているのかなと。*2
ドラマにはいくつかのオリジナル要素があって、どれも原作に欠け気味な「ヤマ」や「オチ」、つまりメリハリをつけるために効果的に機能しています。
中でもラス前の10話で描かれた高級フレンチでのプロポーズシーンは最終の11話での「小賢しいみくりさん無双」な展開とともに漫画とドラマに共通する背骨とも言える思想、アイデアを鮮明に描き出すことに成功している箇所ではないかと思います。
平匡さんらしからぬ用意周到な舞台設定のプロポーズは、「旧世界の遺物」そのものです。
「空気」を読むことで進行する儀式化された一連の婚活プロセス。
夫婦の間のことは理屈でも理論でもないから言語化出来ないという「信仰」。
関係性の言語化、システムの構成に長けた平匡さんですら論理破綻に導く「常識」の落とし穴。
みくりさんが感じた「モヤモヤ」は今の日本に欠けている何かを鮮明に浮かび上がらせます。
「恥をかいてでも逃げた」みくりさんはあの瞬間、誰よりも闘っていたんですよね。
どんな未来を選択するかと言うことについては二人は絶対的な解を示してはいないです。が、システムを固定せずに常に状況に合わせて変更し続ける姿勢、それを大人げないまでに言語化し、システム化する努力こそ、この物語の真骨頂であり、「二人の愛の形」ですよね。
だからこそ、二人はどんな未来でも怖がらずに受け入れられる自信を手に入れることが出来た。
それこそがドラマのエンディング「恋」でフューチャーされたドラマのサブテーマ、「夫婦を超えてゆけ」の示す物、言ってみれば「超夫婦」という思想の結実なんだと思います。
引用した記事の時点ではオチを見ていない段階だったとは言え、「面倒くさいことから逃げずに答えを探すことがテーマのドラマのヒロイン」に対して「クソめんどくさい」「上から目線のクソ」という批判があったこと自体が漫画じみているなーと思ってしまいます。
まあ、むしろ、「ガッキーオーラを超えるウザさ」を認めてしまったこう言った視聴者からの反応という「前振り」があったからこそ平匡さんの「僕はみくりさんを下に見たことはないし、小賢しいなんて思ったこと、一度もありません。」という台詞は暁闇の中でより一層の輝きを放ったのかもしれないし、公衆面前のハグという使い古された演出に感動を呼び起こされてしまう「説得力」が宿ったのだとしたら、ドラマ制作陣としてはまさにしてやったりだったかもしれんですけど(^_^;)*3
完全に蛇足な話し
ところで「プロの独身」と言う生き方が認知を得たと思い込んでうっかり自称してしまったらそれは「自爆行為」でしかないんで「ご同輩の皆さん」は注意しましょうね(^_^;)