読書感想文「非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か」について

 

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個人的に共感する部分が多すぎてまともに線引いてると線の意味が無くなりそう(全部引いちゃいそう)だった。

ま、実際のところはこの人は私より若いし結婚して息子さんも見える。

ん?じゃあこの人はかつての誰にも相手にされなかった自分を回想しつつこの本を書いていたのか?と思われるかもしれないが、そんなことはない。

 

うん、そこがよく分からないのだ。

渇望があればこそ、少なくとも子をなすまでの一通りのプロセスは経験しているのだから、そのことへの言及があったって良いと思うのだが、少なくとも自ら経験したはずの恋愛のブライトサイドへの言及が一切見当たらない。

 

筆者の私生活として登場するのは体の弱い息子を主夫として育てるところぐらい。

大多数がモテない男性であろう読者に配慮して敢えてそういう構成にしたという訳でもなく、恋愛しても結婚しても拭い去れない自分の男性性への嫌悪が本書の大きなテーマだったりするのだ。

 

ん?それってトランスジェンダーであることのカミングアウトってこと?

 

いや、違う。筆者はヘテロセクシャルであり、日本社会の権勢的マジョリティである男性であることを自覚し、ジェンダー研究家らしく自分の性意識のスペクトラム性については赤裸々に認めてはいるものの、そもそも筆者が嫌悪する自分の男性性というものは、むしろ社会からマジョリティとして恩恵を受けているグループの一員であることも含めてその存在についての嫌悪感だとまで説いているのだ。

 

つまり、モテようが、結婚しようが、父親になろうが、その感情とも衝動ともつかない想いは消えないのだ。むしろ、恐らくそうしたステップを踏む度にその想いは新たになっているのかもしれない。自己免疫不全で自らの免疫機構に日々体を蝕まれているような状況が心理レベルで起こっているとでも言うか。

 

それでいて、この人は私よりずっと「当たり前の男性」としての人生を歩んでいる。

 

そういう筆者に共感している自分がいた。

 

いや、どうだろう。本当にそうなのか、よく分からないのだ。

 

例えば、私は今住んでいる町にたった一人中学時代からの同級生の友人がいたのだが、過去形なのは今彼とは絶縁状態だからだ。

きっかけはある晩一緒に飲んだときに、彼にいかに世界は男性的な暴力で満ちていて、生々しく、そこには本来理想主義的なものは理念でしか存在しない、なんて説教をされたからだ。

そういう説教をするからには、私は現実を見ずに理想ばかりを語り、故に現実を生きる力に乏しい。そう心配されていた、と言うことなのだろう。

 

私は現実を知らないわけではない。

一通りのことを知ることがまず人間として生きる上で必要だと思って、えり好みせずに情報も経験も摂取してきたつもりだ。もちろん、一人の人間として生きる上での限界はあるので、その内容は全てと言うには乏しく、偏ってもいるだろうけど。

ただ、そのかつての友人が語ったレベルのことは既知のことであった。

私が彼の説教に激怒したのは、その内容が私が嫌悪することだったから。その一点に尽きる。

この世に嫌いなことなんて山ほどあるけど、嫌いだからと言って避けて人生通れるわけじゃない。実際苦い物を呑み込むような経験はいくらでもしてきた。

ただ、理想として持ってるものまでその苦い物に合わせなきゃいけないのかと言えば、それは違う。

だから、多分、私はあの晩、その元友人に思想的にレイプされたような気持ちになっていたのだろうと思う。実際、その友人も私と大して変わらない弱虫の善人として生きてきたはずなのだ。嫁さんとは大恋愛の末結婚したようだけど、それこそ棍棒で殴って気絶させた奥さんを髪の毛引っ張って自分の洞窟に攫ってきた訳じゃ無い。むしろ、頭が割れるほど相手のことを考えてそこまで行き着いた、というのが私の見解だ。

 

もしかしたら、あまりの私のモテなさを心配してのことだったのかもしれない。

いや、まあ多分そうだろうと思う。

私はスペックにしてはモテなさすぎだと思う。

 

背は低い。(163cm)

今は標準と言っても嘘じゃ無いレベルにサイズダウンしているが人生の大部分は肥満として過ごしている。

酒癖が悪い。

ADHDだ。それに付随するいろんな欠点がある。人の話を聞かない。片付けられない等々。

うん、まあモテなくても不思議というほどでもないかな。

 

一応正職員として働いているし、勤務先は地元の中では良い評価を受けていると思う。

顔は自分で言うのもなんだけど、平均を大きく下回っているわけではないだろう。ここは個人の趣味が大きく反映されるし、だとしても万人受けするとは言わないけど。

 

ただ、モテないのはそれが原因なのかとか、そこをどうにかしたらモテるのかと言えば、そんなこともない、と思う。今「そんなこともない」と書いた瞬間、それは本当はどうなのだろうと考えた。もしかして、世界は私に何かを隠しているのかもしれない。

自分は知らないだけで、自分が抱えている恋愛に対するビジョンなんて童貞の空想ぐらいにしか存在しない物なのかもしれない。

 

 なんて、人(著者)のことは散々言ってるのに自分についてはこんな思考しかできないからダメなんだよね、、、

 

というわけで、あるべくしてモテないだけなんだなーと気付けたことが本書を読んだ収穫、、、なんて話になってしまいましたorz